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米中関税戦争が「90日の停戦」、その深層と日本への示唆は?

NEW 2025/5/15

 世界経済とマーケットに大きなインパクトを与える動きがありました。米国と中国が5月10~11日、スイスのジュネーブでハイレベル協議を行い、追加関税を115%引き下げることで合意しました。関税を巡る米中対立はひとまず緩和したと言えます。その枠組みや内訳はどうなのか。これから90日間の協議を経て、米中貿易戦争はどこへ行きつくのか。同じく米国と関税協議を続ける日本にとっての示唆と教訓は何か。

目次
  1. 米中が「追加関税115%引き下げ」で合意。市場は好反応
  2. 米中関税協議。「勝者」はどっち?
  3. 米中貿易戦争2.0は一時的に緩和。今後の展望と日本への示唆は?

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の加藤 嘉一が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
米中関税戦争が「90日の停戦」、その深層と日本への示唆は?

米中が「追加関税115%引き下げ」で合意。市場は好反応

 世界第一、第二の経済大国である米国と中国との間の通商交渉で大きな動きがありました。5月10~11日、中国の何立峰(ホー・リーフォン)副首相と米国のベッセント財務長官、グリア通商代表部(USTR)代表がスイスのジュネーブで関税協議を行い、その結果として12日、追加関税を90日という期間限定で、相互に115%引き下げることを明記した共同声明を発表しました。

 共同声明は米国、中国それぞれが、5月14日までに取るべき措置を明記しました。

【米国側措置】

  • 中国からの輸入品に対し課してきた追加関税率は累計145%
  • 内訳:フェンタニル流入対策関税20%、相互関税125%(基本税率10%+上乗せ税率115%)
  • 相互関税における上乗せ税率115%のうち、当初発動された24%を90日間停止、残りの91%を撤廃
  • 結果、これから90日間における引き下げ幅は115%
  • これからの90日間、中国からの輸入品に対する関税率は30%

【中国側措置】

  • 米国からの輸入品に対し課してきた追加関税率は累計125%の追加関税
  • 内訳:基本税率10%、上乗せ税率24%、報復関税91%
  • 上乗せ税率24%を90日間停止、残りの91%を撤廃
  • 結果、これから90日間における引き下げ幅は米国と同じく115%
  • これからの90日間、米国からの輸入品に対する関税率は10%

 マーケットも、米中関税合意を(少なくとも一時的には)歓迎し、ポジティブな反応を見せました。5月12日の米金融市場では、ダウ工業株30種平均が前週末比2.8%、S&P500種指数が3.3%、ナスダック総合指数は4.3%上昇しました。また同日、一時1ドル=148円64銭水準をつけ、ドル高円安が進行しました。

 やはり、米中二大国の通商関係が世界経済や株式・為替市場に与える影響は甚大かつ構造的であり、今後も米中関税交渉が市場動向に与える影響を注意深く見ていく必要があるでしょう。

米中関税協議。「勝者」はどっち?

 上記で整理した米中それぞれが取った措置を見てみると、今回スイスで行われた米中関税協議からは一定の「相互主義」を垣間見ることができます。

 90日間、115%、91%…

「可能な限り同じ基準で交渉を妥結させよう」という両国のスタンスを感じさせます。逆に言えば、米中ともに、自国が明らかに不利を被るような交渉は受け入れられなかった。引き下げるのであれば、同じだけの期間と税率を設定するべきだという大国同士の思惑や駆け引きを感じさせます。私から見て、昨今、米国と中国以上に相互性と対等性に執着する二カ国関係はありません。だからこそ、「米中対立」は世界経済や国際関係にとって極めて大きなインパクトを与えるのです。

 一方、「相互主義」という観点から、異なる点もみられます。これからの90日間、米国が中国の輸入品に課す追加関税率は30%、一方、中国が米国の輸入品に課す追加関税率は10%ということで、その数値には差異が存在しています。この点に関して、「なんだかんだ言って、米国は追加関税の引き上げに成功している」「トランプ大統領は取るものは取っている」「米国が一枚上手だった」といったコメントも聞こえてきます。

 一方、中国国内では、「中国の報復措置が功を奏し、今回の関税協議開催、および合意につながった」という観点から、中国こそが勝者だという見方が多くを占めているように見受けられます。「どちらが勝った負けた」という一定の主観性を伴う議論は置いておいて、事実として、中国は10%の追加関税以外に、2月10日、および3月10日に発動した液化天然ガス(LNG)、石炭、石油、大豆、トウモロコシなどに対する最大15%の追加関税は維持されます。中国としても、「残すものは残した」というスタンスでしょう。

 また、米中では関税協議と同時進行で合成麻薬「フェンタニル」を巡るハイレベル協議も行われています。中国政府の立場は、外交部の林剣報道官が5月13日の定例記者会見で改めて述べたように、米国で問題となっているフェンタニルは米国の国内問題であり、対処に当たるべきは米国である、従って、それを理由に中国に懲罰的関税を課すのは不合理だというものです。中国としては、フェンタニル問題を巡る交渉を何とか妥結させ、これを理由に課されている20%の追加関税を米国側に撤廃させ、中国輸入品への関税率を10%まで引き下げるべく、引き続き交渉に臨んでいくのではないかと私はみています。

米中貿易戦争2.0は一時的に緩和。今後の展望と日本への示唆は?

 以上、米中関税交渉を巡る最新の動向を振り返り、検証してきました。前述したマーケットの反応が示しているように、一時は追加関税率が相互に3桁の「大台」に達していた米中間の貿易摩擦が緩和した現状は、世界経済にとって疑いなく朗報だと言えるでしょう。今後の展望に関して、私が現時点で注目しているポイントを3点書いておきたいと思います。

 一つ目に、これから90日間引き続き行われる関税協議に注目していくべきということです。今回の共同声明では、米中が5月14日までに前述した措置を取った後、双方は経済・貿易関係に関する協議を継続するためのメカニズムを設立するとしています。中国側は何立峰副首相、米国側はベッセント財務長官とグリアUSTR代表がそれぞれの国の代表を務めます。協議は中国、米国、あるいは第3国も想定し、必要であれば事務レベルでの協議も行っていくとのこと。複数のレベル、場所で、柔軟かつ機動的に関税問題を解決していくという双方の意思を見ることができます。今後の展開に要注目です。

 二つ目に、「90日後に起こる事態」をどう予測するかです。90日の間に協議が一層進展し、米中貿易戦争がさらなる緩和を達成することが望ましいことに疑いはないでしょう。では、仮に90日の間に合意がなされず、交渉が破綻した場合、どうなるでしょうか? 冒頭に記した両国の措置にあるように、今回引き下げられた115%のうち、90日間という期限付きで発動が停止されるのは、それぞれ24%の追加関税であり、残りの91%は撤廃されます。従って、仮に90日後にこの24%が再び追加関税として課されたとして、米国から中国への関税率は54%、中国から米国への関税率は34%となります。この数字をどう理解するかに関しては議論が分かれますし、「それでも高関税」と見なすこともできると思います。ただ、一時期のような、実質的な貿易や取引の停止を意味する145%対125%という天文学的な税率に戻る可能性は低いと私はみています。その意味で、今回の緩和は、確かに緩和といえるのだと思います。

 三つ目に、日本として今回の米中関税交渉と合意をどう理解し、示唆をくみ取るかです。日本も現在、90日という期限付きで米国と厳しい関税交渉を行っています。7月上旬までに交渉がまとまらなければ、10%の一律関税に加えて、24%の相互関税が日本の輸入品に課されることになる可能性が高いです。そんな中、日本は今回一時的な妥結を見た米中関税交渉からどんな教訓をくみ取るべきか。中国側は今回終始強硬的なスタンスで臨み、報復措置を取りながら、最終的に米国側の妥協を引き出しました。日本は中国ではありませんし、米国の同盟国ですから、安易に報復措置を取ることは考えられません。一方、日本の国益を守るという強い姿勢を見せつつ、ここだけは譲歩できないというボトムラインを示しつつ、その上で歩み寄り、合意を追求する基本的姿勢を見せ、貫くことが重要である、という点は、日本の対米交渉にも応用できるのではないでしょうか。

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